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「ベトナム社会主義共和国のテロ概要」

 

 

2008年12月31日現在
                        在ベトナム大使館
 

 
1.概況

(1)ベトナム政府は、2006年4月の「第10回共産党大会」において引き続きドイモイ(刷新)政策を推進していくことを確認しました。市場経済化及び対外開放を柱とするこの政策によりベトナム国民の生活水準は概ね向上しましたが、その一方で所得格差が拡大しており、昨今は、麻薬の密輸や売春、汚職等の各種犯罪が増加しています。例えば、2001年12月に逮捕されたチュオン・ヴァン・カム(通称ナムカム)及びその一味による組織的犯罪は治安当局を含む政府高官の汚職にまで発展したことから、ベトナム国内で大きな反響を呼びました(2004年6月、ナムカムら関係者5名に対し死刑執行。)。そして組織的な麻薬の密輸及び人身売買など、国境を越える国際犯罪は増加しています。


(2)ベトナム治安当局は、これまで国内にテロ組織や反政府組織は存在しないとしていますが、ベトナム人海外移住者(以下「越僑」)を主体とする反政府活動家の活動に対しては警戒を強めています。国内では、1999年3月から2000年8月までの間、反政府組織FVA(海外自由ベトナム政府)のメンバーがホーチミン市内でテロ事件を準備していたとして検挙され、また、2007年3月、ベトナム人弁護士(グエン・バン・ダイ及びグエン・ティ・コン・ニャン)が、同年4月、ベトナム人ジャーナリスト(チャン・カイ・タイン・トゥイ)が、それぞれ反政府活動の容疑で検挙されています。更に、2007年11月、反政府組織ベトタン(ベトナム刷新・革命党)のメンバーがベトナムに入国したところを、反政府を呼び掛けるビラの配布を準備していた容疑などで当局に身柄を拘束され、同年12月にベトナム系フランス人(グエン・ティ・タイン・バン)とベトナム系米国人(チュオン・レオン)の両氏が国外追放処分となり、翌2008年5月にベトナム系米国人(グエン・クオック・クオン)を含む他のメンバー3名についても「テロ関与の罪」で有罪判決が下され、国外追放や自宅軟禁等の刑が言い渡されています。

     海外では、2001年6月の在タイ・ベトナム大使館における爆弾設置事件を敢行した(2004年6月、容疑者に対して懲役13年の判決)ほか、同年8月の在フィリピン・ベトナム大使館爆破計画の容疑で反政府組織のメンバー2名が検挙され、2006年4月、国際刑事警察機構(ICPO)ルートにより手配中の首謀者が韓国ソウル市内で韓国当局により身柄を拘束(同年7月、釈放)されています。



(3)これまでのところ、反政府組織は日本や在留邦人をターゲットとはしておらず、今後も在留邦人等がターゲットとなる可能性は低いと考えられます。しかし、ひとたびテロ事件や騒擾事件が発生すれば、これらの被害に巻き込まれる可能性は排除できません。


2.イスラム過激派及びその関連組織によるテロの可能性


 2001年9月11日、米国同時多発テロ事件後、ベトナム治安当局は、全てのテロ行為に反対し、テロ根絶の努力を支持する旨表明しました。
     また、2005年7月7日に発生した英国地下鉄でのテロ事件に対しても、これを強く非難する声明を出しています。

 ベトナム国内のイスラム教徒は、南部・中部を中心に約10万人いると言われていますが、現時点でイスラム過激派の存在は確認されていないことから、治安当局は、イスラム過激派及びその関連組織によるテロ事件の可能性は低いと考えています。しかし、米国におけるテロ事件がベトナム国内に波及する可能性は排除できないとして、出入国管理を強化し、イスラム過激派などテロリストの入国阻止に努めるとともに、米・英・日などベトナム駐在外交団施設の警備を強化しています。

 米国同時多発テロ事件以降、ベトナム国内では、2001年10月、在ベトナム米国大使館への脅迫事案(のちに、ベトナム人男性がハノイ市警察の緊急電話に脅迫電話をかけた悪戯と判明)、2002年10月、同米国大使館宛に白い粉末が梱包された封筒の送付事案(検査の結果、炭疽菌ではないことが判明)、また、同日、ハノイ市内にあるマイクロソフト社など米国関連企業3社に対する爆破予告封書の送付事案などの悪戯事件が連続して発生しました。


3.誘拐事件の発生状況

 現地報道等によると本年に入り、次の誘拐事件が発生した(いずれも被疑者、被害者はベトナム人等であり、短期間のうちに事件は解決済み)旨報じられていることから、相応の注意が必要です。

(イ)5月、ハタイ省(北部地方)内において、14歳のベトナム人少年2名が遊ぶ金欲しさに親類である5歳の児童を誘拐し、殺害する事件が発生した。

(ロ)8月、ハノイ市内において、ベトナム人男性被疑者2名が身代金目的で公安省幹部の親戚を誘拐する事件が発生した。

(ハ)9月、カインホア省(南中部地方)ニャチャン市内において、ベトナム人男性被疑者が身代金目的で小学5年の児童を誘拐する事件が発生した。

(ニ)11月、ホーチミン市内において、ベトナム人男性被疑者2名が人身売買目的で物乞いしていた6歳の児童を誘拐する事件が発生した。
 


4.日本人・日本権益に対する脅威

 現在までのところ、日本人・日本権益を標的としたテロや誘拐の脅威が高いとは見られていませんが、「日本人はお金持ちでガードが甘い」といった風評の影響もあり、都市部を中心に、盗難(すり、ひったくり、置き引きなど。なお、最近、刃物でカバンを切り、在中の金品を盗む手口のスリも散見されています。)、睡眠薬強盗、いかさま賭博、ぼったくりバーや悪質タクシーによる恐喝などの日本人を狙った一般犯罪の増加傾向により治安が悪化していることから、これらに対する注意が必要です。
 

 

 

 

 

 

 

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