1.我が国の協力の背景
ベトナム社会経済開発10カ年戦略では,「2020年までに工業国化を達成する。」という目標が掲げられています。しかしながら,現状,ベトナムの鉱工業生産の中では食品が,輸出の中では一次産品や繊維等の軽工業品が上位を占めています。
2015年,2018年にはAFTA, ACFTAの完全実施を迎え,サプライチェーンがASEANや中国等を含め広域化する中,このまま第一次産業や労働集約型産業中心に経済成長が進むとすれば,外資系企業を中心に,より安価な労働力の確保できる国,又は,裾野産業を含め,より充実した産業インフラの確保できる国への関心が高まっていく可能性があると考えられます。
こうした状況を踏まえ,ベトナムが,引き続き,投資家にとって魅力的な国であり続けることができるよう,我が国の産業政策の経験を踏まえ,協力していくこととして,始まった取組です。
2.ベトナム工業化戦略の目的
日本及びベトナムは,これまでの二国間産業協力を更に発展させ,相互協力の下,選択と集中及び産官学連携の原則にのっとり,具体的な計画を策定,実施することとしています。
(1) 2020年までのベトナム工業化に向けた戦略産業の選定(電子,農業機械,農水産品加工,造船,環境・省エネ,自動車・同部品の6産業を選択・集中的に創設・強化する方針)(2013年7月1日首相承認)
(2) 行動計画(アクションプラン)の策定(2013年7月1日首相決定文書を踏まえ,具体的な行動計画を策定予定。)
(3) 工業化に向けた政策の実装(具体的な行動計画策定の後,政策を実施予定。)
3.我が国としての狙い
我が国は,ベトナムにとって,最大の二国間ODAの供与国であり,最大の対越投資の実施国です。ベトナムが今後とも順調に発展を遂げれば,我が国にとってのビジネス機会も増加し,我が国にとってもメリットとなることが期待されます(戦略的パートナーシップ関係)。
今後の経済統合の進展に伴い,企業によっては,ベトナムの将来の方向性が不透明であると見る向きもあるところ,日越の産官学が一体となり,下記方向性での産業政策立案を目指していきます。
(1) ベトナム産業政策の立案・実施に関与することにより,ベトナムにとって潜在力のある分野に,日系企業がより投資しやすい投資環境の実現を目指します。
(2) 国有企業を中心に,ベトナム企業が,株や土地への投機に流れがちであるのに対し,ベトナムにとって潜在力のある分野に,ベトナム企業がより投資しやすい投資環境の実現を目指します(「裾野産業」の「産業政策」としての捉え直し。)。
こうした取組によって,日系企業とベトナム企業のリンケージを強めることにより,日本にとっては「裾野産業」の課題解決へ,ベトナムにとっては工業分野における国際競争力強化へ繋がることを期待しています。
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