大使挨拶

平成29年4月4日
 
 1.はじめに
(1)2017年は、日本・ベトナムの二国間の歴史において、特別重要な意義をもつ年になりつつあります。年初の3か月間に、安倍総理夫妻の4年ぶり公式訪問(24社幹部同行)、三村日商会頭を団長とする大型経済ミッション来訪、天皇皇后両陛下の初の御訪問(国賓)がありました。各行事において、商工会、在留邦人はじめ多くの方々からご支援頂いたことに、心より感謝を申し上げます。
(2)また、3月、日越間の人的交流拡大を象徴するものとして、JASSO(日本学生支援機構)とJTNO(日本政府観光局)の二つの政府関係機関のハノイ事務所が新設されました。
(3)この数年のベトナム人技能実習生と留学生の急増は、目を見張るものがあります。このことは、日本の少子高齢化、労働者不足に大きく貢献していますが、同時にベトナム人による犯罪と不法滞在の増加という新たな問題を生んでいます。今年に入り、日越両国政府の協力強化に加え、日本において検討会を創設するとともに、偽造書類の横行等に対応するためビザ審査の厳格化に取り組んでいます。
(4)第二四半期には、ベトナム要人が沢山訪日します。フック首相訪日(6月予定)が最大の節目となり、その準備を念頭に、情報通信大臣、投資計画大臣、副首相兼外務大臣、国家副主席(女性企業家数十名同行)も訪日準備中です。日本大使館としましては、フック首相訪日に焦点を当てて、懸案事項の前進、新たな取り組みの実現に尽力したい意向です。また、議会間交流、議員交流も検討されています。
 
2.天皇皇后両陛下の初のベトナム御訪問(2月28日―3月5日)
(1)両陛下の御訪問を振り返ります。御訪問期間中、長年日越関係に関わってきた一人の方が、次のような思いを吐露されました。「自分は30年間ベトナムに関わってきたが、日越関係もようやく両陛下に御訪問いただけるほど成熟した関係になった。感無量である」。長年ベトナムと関わってこられた方々の共通の気持と推察します。
30年前の1987年、ベトナムは、クメール・ルージュが統治するカンボジアに侵攻していたがゆえに、国際的に孤立し、一人当たりGDP86USドルの最貧国でした。外国から要人が次々と来訪し、活気に満ちた現在のベトナムと比較し、隔世の感があります。
(2)両陛下の御訪問は、国賓として訪日したチエット国家主席(2007年)、サン国家主席(2014年)など長年にわたるベトナム首脳からの招待に応えたものです。同時に、90年代初めまで我が国と冷たい関係であったベトナムが、日越両国の先達の御尽力により、今や世界有数の親日国、重要国になったことも重要です。また、昨年8月、天皇陛下が退位の意向を示され、退位のあり方が国会で議論されている中での御訪問は、「両陛下のベトナム重視の証」と考えられます。
(3)天皇陛下は、チョン書記長との御引見等の機会に、「ベトナムが長年にわたる戦火を乗り越えて、平和を達成し、ここまで国を発展させてきたことに対する敬意」を伝えられました。後刻、越外務省高官から、「ベトナム指導者及び国民は、天皇陛下のメッセージに深く感謝している」との意見が寄せられました。50歳以上のベトナム人は、ベトナム戦争を直接体験しており、間違いなく「平和の価値」を世界で最も理解している人々です。
(4)両陛下を迎えるベトナムの歓迎は、国をあげてのものでした。両陛下の御訪問を通じ、日越両国の相互理解と親近感は深まったと確信します。ベトナムでは天皇制度に関して沢山報道され、また、「無私で慈愛」に満ちた両陛下のお言葉や振る舞いは、多くの人に強烈な印象を残しました。あるベトナム人は、「両陛下は日本のモラル・パワー」であると喝破しました。皇后陛下は、残留日本兵の妻、スアンさん(93歳)の前で膝を折り、涙ぐみながらお礼を繰り返す彼女の小さな体を何度も抱き寄せられました。そのお姿に多くの人の魂は揺さぶられました。
更に、これまで少数の人にしか知られていなかった「残留日本兵と家族の存在、日本留学(ドンズー)運動、ファン・ボイ・チャウ氏と浅羽佐喜太郎氏の友情、フエ王宮やニャーニャック復旧と日本の貢献」が多くの方に知られるようになったことも意義深いと考えます。
(5)なお、御訪問プログラムを充実できたのは、杉良太郎氏、小松みゆき氏、古田日越大学学長、夏目医師、坪井早大教授、中川早大名誉教授から頂いた示唆や協力のお蔭であり、感謝申し上げます。
 
3.最後に
今年、ベトナムはAPEC首脳会議(11月、ダナン)の主催国でもあります。首脳会議には安倍総理の出席も見込まれます。日本は、APEC成功のために全面的に協力します。大使館として「今年を日越関係の飛躍の年」にできるよう取り組む決意です。皆様のご支援を宜しくお願い申し上げます。
(了)